ああ、ネイテイブ様

このHPの中で何度もでてきますが、人間、視点を変えて、人様の観点から物を見ることはなかなかむずかしいのです。この世界には色々な民族、人種がいます。外客誘致というのは、言ってみれば、そのような多様な人達にも、「日本はいい所、行ってみたい。行ったら本当にいいところ、快適。」と思わせるような「仕掛け」が不可欠なのです。

そのためには、相手を知らねばなりません。実は、日本人これが不得意です。なぜか。日本列島の上で、日本語が通じる世界でずっと生きてきたことに大きな原因があると思います。思わぬ落とし穴があるんです。私達がまったく疑問を感じないようなことが、相手にとって苦痛だったり、問題だったり。外交官のような方のレベルを言っているのではありませんよ。観光客の誘致に当たる人、観光客と国内で接するような人たちのことです。

通常、相手の好むこと、タブーは、結構、リサーチするんです。でも、タブーとはいえないまでも、「好まない」という程度のことになると、まだまだという感じです。
例をあげましょう。

1、イギリス人は日本の温泉に入らない、入れない。
多分、8割以上がそうでしょう。日本の天然温泉は、熱すぎるのです。温度が。実は、私もぬるめが好きですから、よくわかるんです。この気持ち。北海道にある日帰り温泉の湯など、私は1分と入っていられないです。「低温」という浴槽をさがして、そこでも入って数分です。

また、特に冬ですが、日本の室内は温度が高すぎます。冬に東京のデパートなどに行くと我々でも汗ばみますね。これも彼らが感じていることです。逆に、日本で冬なのに、えらく薄着をしている欧米の方を見かけたことありませんか。北海道ではあまりみかけないかもしれませんが。

専門書などで確認はしていませんが、欧米人は一般的に、我々より基礎体温が高いというのが、定説のようです。さらに、ウエブで探してみると、汗腺の量(白人は少ない、黄色人種は多い)だとか、食生活(肉が多い)とか、欧米人と結婚した人、一緒に生活した人が色々な要因を挙げています。

言えることは、日本人より寒さに強いという事実です。これは間違いないようです。
逆にいうと、熱さ、暑さには弱いのです。

2、「アメリカ人ですか?」
イギリス人に何回も詰問されました。「日本人は何故、我々をみると「アメリカ人ですか?」と聞くのか。」「どうして白人=アメリカ人と思うのか。」 皆さんも聞いてませんか。外人に「あなたアメリカ人?」って。

特に厳しかったのは、当時JNTOロンドン事務所にいたフランス人の女性Cさんです。ちょっとヨーロッパで生活するとわかるんですが、彼女の顔はコテコテのフランス人です。英語も相当フランス語なまりがあります。彼女、九州で生活していたことがあります。いつも聞かれていて閉口していたそうです。フランス人は誇り高いんですよ。何故私があのアメリカ人に見えるのって。

そうなんです。最近になってようやく、いろいろな国の選手で補強しているサッカーのJリーグやワールドカップ等の放映、日産のゴーンさんの活躍等のおかげで、アメリカ以外の国の人の顔をテレビでみることが多くなりました。10年前、20年前は、日本人の90パーセントが「外人=90パーセントアメリカ人」と先入観をもっていたはずです。確かに、米国人の訪日客数は欧米系ではNO1です。それ以上に大きいのが、ハリウッド映画やその吹き替えTVの影響でしょう。野球だって殆ど、アメリカ人ですよね。「外人選手」って。

問題はさらに続きます。ヨーロッパの人達は、一般論として、アメリカを必ずしも好意的に思っていない節があるんです。なぜかを書き出すといろいろな意味で大変な話になるので、それはやめますが、そういう傾向ははっきりしているように見えます。

私は、疑問を呈してきた彼らに言います。「それだけ、日米の絆が強いのですよ。第一、日本は戦争に負けてアメリカに占領されたでしょ。安全保障でも、経済でもいろいろな面で交流が深いのですよ。」
でも、不満顔です。理解できないという顔です。そもそもヨーロッパ人には、ローマ帝国から始まって、地球の文明は自分達が築いてきたというプライドがあります。たかだか200年ちょっと前にできた国と一緒にしてほしくないという感じがあるようです。まあ、そういう彼らも、人によっては、我々のこと、韓国から来たの?とか、中国から?と聞く人がいますけど、極々まれであることは確かですよ。 

以上のようないらぬ不快感を与えるのを避けるためには、どうするか。
相当自信がない限り、何も考えず、「Where do you come from ?」と聞けばいいのです。

3、ああ、ネイテイブ様
最後に、この件に関連して、表題の話、私の失敗談です。
「Where do you come from?」と聞いても、こんなことが起きるのです。

昨年秋、北海道大雪高原の温泉で外人に会いました。札幌の高校で英語を教えているんだそうです。お互い熱い風呂だめですから、露天風呂の縁に腰掛けておしゃべりしてました。
「Where do you come from?」
「Paris」
ん?フランス人って英語下手なの定評あるんです。特に発音。そんな人が英語の教師ですって?もしかしたら日本を甘くみてませんか?
しばらくお話していましたが、英語がとても流暢なのです。それで私、思わず、言ってしまいました。
「Your English is very good. Where did you learn it?」 彼曰く、
「Oh! I lived and studyed in England. My mother is English, father is Amerian. It is very difficult to explain why I was born in Paris, but I was’t brought up in Paris..」

最初から言ってくださいよ。ネイテイブ様じゃあないですか。なんかの事情でたまたまパリで生まれたからと言って、「Paris」なんで言わないでくださいな。ネイテイブ様に英語うまいね、なんて言ってしまったのは初めてですよ。

そう言えば、その時になって気がつきましたね。彼が全然フランス人らしい顔してなかったことに。