第8話からの続き。
今回は、在英中のある年、年末年始の休暇にチロルにスキーに行ったときの話です。

前にも(第3話、第8話)お話したように、イギリスには、基本的にはスキー場はありません。そこで、イギリス人は皆大陸にスキーをしにいきます。日本の車中泊夜行ツアーのようなもの(ユーロトンネルができて可能になりました。)もありますが、基本的には、1週間単位の貸切団体ツアーが主流です。我が家も年末年始休暇を利用してそれに参加しました。

我々が申し込んだのは、THOMSON というイギリスでは大手の旅行会社のツアー、スキーツアーを多く手がけていることでも有名です。では、何故、オーストリアか。安いからです。フランスでもよかったのですが、第3外国語はドイツ語でした。別にドイツ語だって、分かるとか、できるとか語れるレベルではないです。しかし、フランス語は発音できません。まったくなじみのない言葉です。それに、チロルという名前に惹かれました。

出発の日です。空港に行き、チャーター機に乗ります。団体旅行専用のチャーター機に乗るのは、我も初めてでした。特別の仕様です。座席のピッチがえらくせまいです。座席の背もたれも低かったです。なんかベンチの椅子に座っているような感じでした。私達がこうなのだから、体格のいい英国人はもっと大変だったでしょう。

1時間半ほどで、ザルツブルグにつきます。そこから、バスに乗ります。この辺から、なんか雰囲気がおかしいと気づきます。御一行さま30人位でしょうか。アジア人は私達だけです。ホテルと思ったら、日本でいうペンションを大きくしたような宿につきます。従業員、オーストリア人かと思いきや、全員イギリス人です。チロルの雰囲気は宿には全くありません。食事も基本的には、イギリスで食べるようなものです。美味しいソーセージのようなものは出たような記憶がありません。ある意味質素なものです。

そうなんです。完全に、イギリスの会社がイギリス人スキーヤーのために、囲いこんでしまっているような空間なんです。そこは。まあ、たとえば、日本で言えば、J・・パックやL・・・といったような団体パックがありますが、まさしくその英国版です。日本のパック以上に徹底しているかもしれません。バスに乗った時の違和感の理由に気づきます。そうか、これはこてこてイギリ人のためのパックなんだ。例えて言えば、さきほどのJ・・パックで香港に行く旅行にアメリカ人やイギリス人が加わっているようなもんなんです。我々の存在は。イギリス人は不躾ではありませんから、あからさまな好奇の目は向けてきません。しかし、なんとなく、しらっとした雰囲気を感じるんです。

最初はこの雰囲気が、気になっていましたが、段々慣れてきます。私はあまり、気にせず、自然体で御一行様のメンバーにも適当にお話します。

そうこうしているうちに、金曜日になりました。朝夕の食事は込みのツアーですから、食事は皆1階レストランでとります。アルバイトとおぼしきイギリス人女性がサーブしてくれます。
その晩は、ちょっと雰囲気違います。なんかウエイトレスの皆さん艶かしい雰囲気。ノースリーブのドレスなんか着てるんです。心なしか、愛想もいい。これは何なんでしょう。
「今日はちょっと違うじゃない。」とちょっとちょっかい出してみます。微笑むだけで真面目に応えてくれません。とうとう、滞在中は理由は判らずじまいでした。

帰国(イギリス)してしばらくして、ふと思い出して、英国人事務所スタッフSさんに聞きました。
ちょっとびっくりの証言です。曰く
「イギリスでスキーをするのは富裕階級です。宿のアルバイトのイギリス人女性は、実は、そこで、お客さんの中からいいボーイフレンド、結婚相手を見つけるんです。これ、かなり一般的なことで、そうして知り合って結婚した人は結構いるんですよ。」

あっ、そういうこと。それで合点がいきました。そういわれてみれば、ウエイトレスの皆さん、若くて、容姿の水準高い人が多かったような気がします。しかし、残念なことに、私達の参加したツアーに独身の男性など殆どおりませんでした。家族連れがほとんど、もしくは、女性グループでした。独身の男性グループがいたら、彼女達はどんな行動に出たのでしょう。興味あることでしたが、拝見することはできなかった訳です。
私がちょっぴり感心したのは、彼女達、私達アジア人を含め、誰にも公平に愛想良くサーブしてたことです。どうも、このアルバイト、結構、競争率が高いようで、いろいろな意味で粒ぞろいのようです。

思いもかけず、英国のちょっぴりハイソな風俗の一面をかいま見ることが出来た旅行でした。

きょうはここまで。滑る前に終わってしまいました。肝心のスキーのお話は次回で。期待していた方申し訳ありません。

オーストリアチロルでのスキー (上)