ロンドンで驚いたこと
もう、6年以上前になりますが、ロンドンに赴任して、驚いたことがいくつかありました。

1、道を聞かれたこと

赴任して一週間も経たない頃、リージェントストリートを歩いていたら、イタリア人とおぼしき若者から道を聞かれたことがあります。(えっ?何で?何で私に聞くの?わたしゃ白人でないよ。イギリス人に見えるの?イタリア人にも見えないでしょう。)こう思いつつも、対応はしました。

私はこの件で、ああここは日本じゃないんだ、と改めて思い知らされました。英国は植民地を沢山かかえていたので、ある意味では多民族国家なのです。特にインド人はよく目立ちます。くだんのイタリアの若者にしてみれば、私がキチンとスーツを着ていたので、アジア系だとは理解していても、住民と思い、それで質問したのでしょう。日本では、これまで、肌の色などから一見してこの人は日本人ではない=日本に住んでいない、と判断してきたものです。しかし、イギリスやヨーロッパではそうではありません。彼にとって、誰に聞くかという判断の際に、肌の色は本質的な要素ではなかったようです。事実、私はその後も、ヨーロッパ系の旅行者から何回となく道を聞かれました。

基本的に、肌の色の異なる外国からの移民がほとんどいない日本では考えられない選択です。そして、日本ほど他民族性の少ない国は、他の主要国ではあまりないのです。もっとも、最近の六本木や神谷町のあたりでは、一見して外国人とわかる住民がかなり増えてきました。日本のこの意味での同質性が、人口の減少傾向にあるこれからも、今までのようにあり続けるかはよくわかりません。

2、日本の山って富士山だけ?

英国旅行会社のパックでオーストリアにスキーに行った時のことです。
わたしのスキーの腕前が皆の中では一番だったので、あるイギリス人に聞かれました。
「結構うまいけど、どこでスキーを習ったんだ?」
「日本です」
「富士山でスキーをしたのか?」
「!!? いや、富士山ではちょっとできないけど。日本には他にもいい山がたくさんあるからそこで」

人間だれしもおなじですが、自分の周りの環境に基づく先入観をもってしまうんです。
英国イングランドには山という山はありません。丘ばかりです。(スコットランドとウエールズは違いますが。)したがって、日本にもそんなに山はないと思っているのです。日本を紹介するときにも、富士山の紹介はしますが、日本の国の8割が山であることなど、一般的に積極的に言ってません。だから、そういうと皆びっくりするんです。彼らが見る写真は主に都市(東京、京都、奈良、日光etc)のものです。日本の国土の状況をイメージする情報に乏しいのです。彼らの思っている日本の山=富士山だけ なんです。

日本に山が多いことをPRして効果的なのは、オランダやデンマークです。両国とも極端な平地の国です。前者の最高の標高が約300メートル、後者が約170メートルです。逆に、我々日本人は両国がこんなに低い国だとは、「そう言えば、そうか!」であって、明確には認識していないでしょう。自分の国土の状態が念頭にあるからです。

余談ですが、英国にはスキー場がスコットランドに一箇所だけあるそうです。「どんなところ?」と聞くと「あそこには雪はなくて、氷だけ」と言われて行く気が失せました。そういえば、冬季のオリンピックに英国の旗があがることはまずないですね。特にスキーでは。

3、香港から東京に行くのに新幹線で何時間かかりますか?

今はもうないと信じたいのですが、ついこの間まで、JNTOロンドン事務所で聞かれていた質問です。Far East とはよく言ったもので、英国からみると、日本は、はるかかなた日付変更線の手前にある国です。
多分、シンガポール、香港から東側の地理的感覚がほとんどないので、香港と陸続きになっていると思っているんです。しかも、新幹線が通っている。

さらに言えば、英国人で日本が4島から成っていることを知っている人はほとんどいないと思います。島国であることはある程度知られていても、そこまではと言う感じです。それで、私はある時から Japanese archipelago と言う言い回しを多く使うようにしました。archipelagoは群島、諸島という意味です。ちょっと発音に癖がありますが。
もっとも、多くの日本人もイングランド、スコットランド、ウエールズの名前は知っていても、地理的状況を知っている人は多くないでしょう。いわんやアイルランド島がアイルランド共和国と英国の一部の北アイルランドに分かれていることなど・・・・・

かつては笑い話でしたが、香港からの新幹線はそのうち実現するかもしれません。中国は急ピッチで新幹線網の整備に取り掛かっていますから。